支局長からの手紙:若者の「生きる」街に /和歌山
今、気になっていることは「物質量」ですがこんなニュースがあります。
わかやまNPOセンター主催のシンポジウムで、山本健慈・和歌山大学長、同センター新理事長の岩田誠・同大経済学部元教授とともにパネリストを務めました。
テーマは「和歌山における地域づくり戦略」で、「そんな知識はありませんから」と尻込みしたら「進行役として」との依頼。
「それじゃ、お二人に任せればいいか」と安易に引き受けました。
ところが本番で、岩田理事長に質問したら「それは、新聞記者の立場で話してほしい」と逆に振られ、たじたじになってしまっていました。
シンポ前、山本学長を大学に訪ねました。
実は、毎日新聞の連載「わたしとおかあさん」に登場してもらっていて、「『家出のできるまちづくり』が重要」という言葉が、印象深く残っていました。
「トラブルの時、行くあてのある人間関係が地域に必要」という趣旨のようでした。
初対面のあいさつからすぐに「今の学生はペーパー試験で入学してきて、大学になじめず、退学していく」「(入学前に)惨たんたる18年の人生を送ってきた子を育て直すのも大学の役目」と、大胆な発言にびっくり。
教育評論家ならともかく、最高責任者の言葉ですから。
しかも同じことを就任時、文部科学省事務次官にも語っていたそうです。
岩田理事長からは事前に、共著の「わかやま再生 市民・企業の地域貢献が鍵」(日経大阪PR発行)を寄贈されました。
「(和歌山の)じゃんじゃん横丁を盛り上げる」「合併しない上富田町の新しい生き方」など、他都市、外国との比較を交えて多角的に展開。
他の書籍から「休業商店は教室に、飲食店は学食に」「商店街は学生たちのアルバイト先」といった発案を引用した上で、観光学部の市街地誘致に期待を寄せていました。
結果的に実現しませんでしたが......。
さてシンポでは、山本学長は「いざ大学に入っても、すぐに就職準備に追われてしまっている。
『自分がどんな人間なのか』『何に向いているか』『今後の人生は』といったことを思索する余裕すらない。
そんな学生を支援するために、大学教員も変わらなければならない」と力強く発言。
「協働」をキーワードに地域の役割を説き、「市街地も『どういう地域にすることが幸せか』考えてほしい」と。
さらに、映画化された小説「沈まぬ太陽」のモデル、故・小倉寛太郎さんなどを例に挙げ、「志」を強調していました。
一方、岩田理事長は、関西をEUに見立てて、大阪をロンドン(金融)、京都をパリ(文化)などと位置づけ、「和歌山はリゾート地としてのスペイン、ポルトガルになりうる」と夢を提起。
「全国で都市が衰退し、ぬくもりのある街がなくなっている状況で、むしろ地方としての和歌山の時代を見つけていきたい。
そのためには、政治家が思いきった決断を」と求めました。
元記者として、マスコミにも「このような時代になる前に、中心街をどうすべきか、キャンペーンを張るべきだった。
単なる催し記事を書いているだけではだめだ」と苦言を呈しました。
芥川賞作家、辻原登さんは、7月にフォルテワジマで開いたシンポジウムで「やっぱり若者が街の中心をうろうろしていないと寂しい」と話していました。
この日のお二人の話を、その「寂しさ」払しょくへのヒントにしたいですね。
【和歌山支局長・嶋谷泰典】
11月4日朝刊
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最終更新:11月4日14時0分
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